2006年9月30日土曜日

『六番目の小夜子』

(恩田陸)



ある高校には、十数年前から続く奇妙なゲームがあった。「小夜子」は毎年、密かに受け継がれ、3年に一度ある行動をする。六番目の小夜子の現れる今年、津村沙世子は転校してきた。美しい転校生、教室にひっそりとおかれた赤い花瓶と深紅の薔薇、そして今年の「小夜子」は動き始めた。学校という特異で、閉ざされた空間は、3年ごとに新たな生徒を受け入れては吐き出し、ゲームは生き続けていく。



 



伝説の、といわれる著者のデビュー作。発表当初は酷評されて絶版になったという。



なるほど、確かにデビュー作だけあって、粗いなと感じるところもありますし、なんとなく未消化なまま終わってしまった部分もあるように思います。



でも、学校というものを「生き物」のように捉えた発想と筆力は素晴らしく、上記のような点を補って余りあると思います。



学校、って改めて考えてみると、本当に不思議な空間ですよね。毎年のように生徒達は入れ替わって、でも「校風」のようなものが染み付いていて、きっとそれは「小夜子」伝説のように形あるものでなくても、やっぱりひっそりと学校に息づいているもので。



作中での秋(しゅう)の思考:『俺のような、余計なことを考え、こそこそと探り回る第三者をもってして、このサヨコという行事が何年も継続してきたのではないだろうか。こうして学校と言うこの閉じた世界はぐるぐると永遠に回り続けているのではないだろうか―――』というのは象徴的だなぁと思いました。



時に薄寒さすら感じさせる深さがあって、でも、日々爽やかに賑やかに学生達が過ごしている場。その雰囲気をここまで醸しだせるのはすごいです。



そして、やっぱり最も印象深いのは、文化祭の場面。このすごさは、読んだ人でないと分からないと思います。このためだけでも読む価値あり!



(新潮文庫)



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