2006年8月31日木曜日

『白い犬とワルツを』

テリー・ケイ (兼武 進 訳)



長年連れ添った妻に先立たれたサム。父を気遣う子供たちに感謝と少々の意地を抱きつつ一人余生を歩み始めた老人の傍らに、いつしか真っ白な犬が寄り添うようになった。どこからともなく現れた白い犬は、他の人の前には姿を見せず、ほえず、老人にしか触らせない。一日一日を大切に日記に書きとめ、妻や友人たちとの過ぎ去った日々を回想しながら、老人の静かな日々が過ぎていく。



静かに余生を送るサムと、そこに寄り添う不思議な犬。心が温かく、切なくなる物語でした。



サムは、真っ白な犬と、おんぼろのトラックと、丹精こめた苗木たちと、妻や友人の思い出に包まれて、何でもない日々が過ぎていく。ほんの少しの冒険(サム自身はそうは思っていないけれど)はあるけれど、穏やかに、静かに時が流れていきます。



一方で、そんなサムと犬を取り巻く子供たちや知人達の行動は、サムへの思いにあふれていることを十分に感じさせながらも、とてもユーモラス。周囲の人の前には姿を現さない白い犬のことを話すサムを見て、頭がおかしくなったかと心配する娘達の会話は微笑ましくて、でも、本人達は真剣に心配しているのだからそれを考えると悲しくて。



白い犬は、きっと誰のそばにも現れるのでしょう。一人残った老人のそばに寄り添う、やわらかくて、あたたかいそれは・・・。



もっと年を重ねてから、また読んでみたい本だな、と思います。まだ、毎日をあくせく過ごしている私にとっては、一里塚のような物語でした。



(新潮文庫)



2006年8月29日火曜日

mixiもこっちに。

どうも、横着者の私には2箇所運営は無理らしい^^;
というわけで、こちらに統一。



◆mixiからお越しの皆様
今日から外部ブログにします。昔からやってた読書記録サイトが、ずっと更新不能になっていたので、ブログにして再開したのですが、やっぱりmixiと両方は無理!(っていうか面倒)ということで。



こちらでの私のハンドルネームはぺこです。別にきこでも良いです。
オットはシュウゾーです。別にマスオでも良いです。(←本人未許可)



アクセス制限ありませんので、個人が特定できてしまうようなコメント(実名とか)はご遠慮くださいませ~。



それでは皆様、よろしくお願い致します。



『海辺のカフカ』

村上春樹



「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」。
15歳の誕生日に父から逃れるように家を出た少年は、高松の私設図書館の片隅で暮らすようになる。


読み終えたものの、消化不良のようです。



細部のエピソードは面白く引力があるし、登場人物、特に「大島さん」の言葉は哲学的で、リズム感があって、美しい。けれど、全体としては何が言いたいのか?ファンタジーとしてすらストーリーが成り立っているとは言い難いように思います。



ただ、そこが村上春樹さんの良さなのかな、とも。



全文を通して「メタファ」という言葉がよく出てきます。万物はメタファである。
ここからして、私にはアウト。メタファと言われれば、それが指し示すものがないとおかしいではないか、と思ってしまい、それを考えてしまう。そして、いくら読んでもそれがあるようには思えないのでした。本当に村上氏の中では、この本に出てくる膨大で複雑に絡み合うメタファ全てに具象があり、ツジツマがあっているのでしょうか。



(こういうことを考えてしまう時点で、私は村上氏の作品に向いていないのかもしれない・・・)



山奥で、自然に囲まれた少年の描写は、とっても好きでした。



2006年8月27日日曜日

『ゲド戦記』

土曜日、近くの映画館で『ゲド戦記』を見に行ってきた。



なぜか父と2人で^^;
その映画館、シニアは1,000円で見られる。うちの父は、68歳。バリバリ現役で仕事しているので、当然私より全然収入ある、、のに、私が1800円で父は1,000円。ナットクがいかない!!!



なんつって、父に驕ってもらっちゃったけど(T▽T)。エヘ。



ちなみに、私と父が映画見ている間、これまたなぜかシュウゾーは母とゴルフの練習場に行っていた。なんだかな、この磯野家。



 



さて、それは置いておいて、『ゲド戦記』だ。



・・・・。



残念。



次回作に期待?



風景絵柄の雰囲気とかはとても好きだったんだけどな。



原作に振り回されてしまったのだとは思うけど、竜が出てくることに意味が見出せない。きっと原作はシリーズものだから、その辺の世界観とか設定がしっかり見えるんだろう。竜の飛翔シーンの映像はすごい!!と感動したので、もったいないなぁ、と。



「生と死」「光と影」というちょっと重めなテーマに対して、ストーリーが軽すぎる。更に、そんなストーリーなのに、音楽が荘厳すぎ。絵の雰囲気とはすごく合っていたし、音楽そのものはすごく良かったと思うんだけどなぁ。



局地的に悪い魔女がいて、少年と対決。魔女が勝つと世界が大変なことになるよ、ってことなんだろうけど、個人的なケンカにしか見えない。そして、『ゲド戦記』なのに、ゲド、あんまし戦ってない。きっと、原作は、、、以下略^^;。



それから、キャラクタ設定とか世界観とか、どうも新鮮味がなかった。新監督が今まで吸収してきた色んなものを集大成して作ってしまったからこうなったんだろうか。次回作があるなら、独自性が出てくることに期待!



ついでに、絵が今回荒くないですか?引いたアングルの時の小さく描かれた人物とかがすごく適当な気が・・・。人物画の色合いも、単調だったような・・・。でもこれは、私がこれまであまり映画館で観なかったから気付かなかっただけかも?
画面の切り替えとかの効果もイマイチだなぁ~、と。特にラストシーン付近。



こういうのって、監督の力量なのかな??アニメーション映画の作成において、監督がどれくらいの裁量を持っていて、どの程度影響するものなのかがイマイチよく分からないです^^。



最後に、最も駄目だししたい部分。声優が下手すぎ!!特にテルー。途中の歌は良かったけど。エボシ様(笑)はうまかったですよ。



というわけで、色々残念。ジブリな分、余計かな。あと、CMがすごーく気に入ってたので、それで更に期待も大きく。すべてが裏目に出ました。



ま、でも父とデートは楽しかったので良しとしよう^^。



2006年8月24日木曜日

最近のワタシ

せっかくサイト再開したので、近況報告でも。
・・・と言っても、たいして代わり映えしないのですが。



シュウゾーが帰国した、のは確か前のサイトでも書いた、かな??
3月末に帰国したシュウゾー、元気にやってます。そして、シュウゾーはマスオに改名しました(笑)。
今、私の実家に一緒に住んでいるんです。色々と事情もございまして、多分2、3年は居候することになるかと。最初は、シュウゾーが気を使うかなぁ、、、と心配していたんですが、特に問題なさそう。



シュウゾー、驚くほどマイペース(いや、わかってたけどさ)。
そして我が母、適当すぎ。さすがオヤコ(笑)。
そして我が父、、、やっぱり変人。さすがオヤコ(爆)。



母とシュウゾーは、なにやら私が会社に行っている間に二人でゴルフの練習場に行ってみたりしている。(帰国直後でシュウゾーは休暇を取っていたので)
シュウゾーは、どちらかというと朝が遅く、夜が遅いので、起きてくる頃には私は出勤しており、帰宅する頃には私は半分レム睡眠。朝は起きて自分で朝ごはんを食べているようが、母もなんとなくその場にいておしゃべりをしている模様。私と同じでおしゃべりな母。私よりもおしゃべりなシュウゾー・・・そうして、シュウゾーの出勤時間は更に遅くなっているようだ。
で、そんな感じなので、なんだか私が知らないシュウゾーの職場のことまで母がよく知っていたりする。ムムム。夫婦の危機だ。まぁいいか。(いいのか??)



そんなわけで、シュウゾー元気。





・・・って、なんで近況がシュウゾーのことばっかりなんだ・・・。まぁいいか^^;。私の代わり映えしないサラリーマン生活よりは、面白いネタでアル。



2006年8月23日水曜日

『流転の海』『地の星』

宮本輝



『流転の海』『地の星』『血脈の火』『天の夜曲』の四部作のうち、2部。
敗戦から2年。戦前、タイヤ業界で羽振りを利かせた松阪熊吾は、ゼロから松阪商会を立て直そうと動き出す。そんな折、諦めていた子を授かる。50歳にして初めて得た息子を溺愛し、「お前が20歳になるまでは絶対に死なん」と誓う熊吾。自信家で、激情家、しかし冷静で、頭が切れ、人情家、更には好色。そんな熊吾を取り巻く世界と人々は、まさに流転の海。



松坂熊吾のキャラクター、戦後の闇市が残る経済、人々の生活。そういったものをとてもうまく消化しているな、と思います。父と子の物語、と銘打ってありますが、2部まではひたすら父の物語ですね。朝の連ドラを見ているような気分。



熊吾のキャラクターが非常にユニークというか、際立っていて、そこがこの作品の魅力かと。少々、長い話の中でちょっとキャラクタの感じが違ってきてないか??と気になった部分もありましたが。熊吾の言う薀蓄というか、人生観も、なかなか深みがあって良いです。



ちなみに、私は現実に熊吾のような人がいたら、、、大嫌いですね(笑)。



なお、後半の2部を読んでいない理由は、、、、ちょっと飽きました(爆)。



(新潮文庫)



『天国の本屋』

松久淳+田中渉



ある日、さとしはアロハシャツを着たおかしな男に声をかけられ、連れて行かれた先は天国だった。男の経営する本屋さんの店長代理をやる羽目になるさとし。緑の瞳をして生意気な口ばかり聞くユイ、一日中漫才をしているのかと思う店員達。そして、何もやりたいことがなく就職活動にも気合の入らなかったさとしは、意外と本屋という職業が合っているみたいで、、、店のサービスの朗読を担当するようになる。



絵本ですね。お話の中身や雰囲気もそうだし、実際挿絵がいっぱい。大きな字で読みやすく、さらさらさら~、と1時間くらいで読めてしまいます。



内容は好き嫌いがわかれるかもしれません。私自身は、ほっこりとした気分になれた一方で、意外性ゼロの話なので物足りなさも少々感じました。でも、絵本てそういうものだったよな、とも^^。誰もがわかっていることが、童話や昔話として語り継がれるのは、それが人にとって大切なことだからですよね。



「泣いた赤おに」の童話が繰り返し引用されているのが、とてもやわらかい、あたたかいものを呼び覚ましてくれるかと思います。



(新潮文庫)



2006年8月21日月曜日

『虚空の逆マトリクス』

森博嗣



7つの短編集。
サイバー空間と現実世界の絡み合いを描いた「トロイの木馬」、毎日同じ時間に真っ赤なドレスを着てバス停に座る老女のナゾ・・・「赤いドレスのメアリィ」、回文(上から読んでも下から読んでも同じになる言葉・文)同好会が謎解きに当たる「ゲームの国」、人気シリーズ犀川&萌絵の短編「いつ入れ替わった?」 など。



うーん。。。森博嗣さんの作品は結構ちょこちょこ読んでいるし、犀川&萌絵シリーズも好きなんですが、この短編集は今まで読んだ中で最低評価かも。。。ファンの方すみません。。。



と、思いつつ、今amazonの書評を見たら、結構皆さん高評価でびっくり。。。



おぉ!!と思ったのは「ゲームの国」に出てくる、超長文の回文の連発くらいかな(5行くらいに亘る文が、逆から読んでも同じになる!!)。あれはすごい。あれは本当に森氏が考えたんだろうか??すごい。



犀川&萌絵の展開については、(以下ネタバレ反転)私的には不満~。犀川先生、人間的になりすぎです。これはこの短編に限らず、シリーズが進むにつれて段々そうなってきてたけど。最初の飄々とした犀川先生が好きだったのに。。。指輪あげちゃうなんて、ベタ過ぎ。所詮男だねあんたも。。。(ヒドイ^^;)



(講談社文庫)



2006年8月19日土曜日

『盗みとバラの日々』

赤川次郎



「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ
金にモノを言わせた祖父に駆け落ちを阻まれた令嬢・真琴。それから3年、城の内グループの会長である祖父は若く美しい後妻を向かえ、彼女は会社の富を欲しいままにしていた。



シリーズ、と紹介しつつ、読んだのは初めて。多分、10作目くらい?
赤川次郎は中学生くらいからちょこちょこ読んでいるが、さらりと読めて、テンポが良くて、キャラクターが魅力的。といっても、破天荒だけどちょっとカワイイ女性、というのがシリーズを跨いでワンパターンか?という気もする。
この妻は刑事、の妻・真弓も例にもれず、破天荒。後輩をこき使い、拳銃をぶっ放し、でも泥棒をしている夫にはメロメロ。夫はクールで、さらりと盗みの腕で人助け。と言っても、泥棒には変わりないけどね。
この作品は、赤川次郎の中では結構読み手があったかなぁ、という気がする。



(徳間書店)



2006年8月18日金曜日

『オーデュボンの祈り』

伊坂幸太郎



コンビニ強盗に失敗して、気が付いたら、荻島にいた伊藤。反対のことしかしゃべらない元画家、未来のことを予見するしゃべるカカシ優午、人殺しを許された桜と呼ばれる男。。。江戸時代、日本が鎖国を終えると同時に外界との交わりを絶ったその島は、独自のルールで動いていた。
そして、案山子の優午が「殺され」る。なぜ、カカシは自分の死を予見できなかったのか。「オーデュボンの話を聞きなさい」という 優午の言葉は何を意味しているのか。。。





こりゃ面白い。独特の世界が作り出されていて、あるわけないんだけど、結構自然に入っていける。案山子が殺されたりしてファンタジー風なのかと思いきや、ミステリーの中身はとっても現実的。そして、案山子の、オーデュボンの、「祈り」は結構「深い」。とっても大切なことを言っている。
最後に静香に対して伊藤が言う「そうだとも、それのほうがよっぽど大事だ」と笑いながら言う言葉もとても印象的。



スカッと一息入れられるけど、色々考えさせられる感じの小説かな。
警察官城山のエピソードはいらんかも。



オススメです。



(新潮文庫)



読書記録としてのブログ

ブログを始めてみることにしました。



わたくし「ぺこ」のHNで運営させて頂きます。



これまで、「Pekoe's Salon」の名称で、2003年から読書記録を中心にしたホームページをやってきました。そこでは、読書の記録を一冊一冊、結構丁寧に書いてきましが、このところのどたばたで継続が困難になり、現在更新が長期間滞っている状態です。



しかし、このページを通してお知り合いになれた方も多く、皆様と本の情報交換をしたり、本の感想を話し合ったりするのは私にとって本当に大きな楽しみです。なんとか継続をしたい!と思い、今回形式を変えての再スタートを試みる次第です。



皆様、今後ともよろしくお願い申し上げます。



そもそも、ブログにしよう、と思ったのは、最近、高校時代に知人に誘われてmixiを始めたのがきっかけです。覚書のように日記スペースに読書記録をつけていたら、「あ、これなら継続できるかも?」と思い至ったわけです。



形式としては、ブログで日々の雑記と読書記録を書いていきます。
けれど、私は意外と「整理魔」でして(部屋の片付けはしないのにネ)、やっぱりきちんとした読書記録も残しておきたい。せっかくXMLなんて試してみたしね^^。というわけで、これまでの読書記録の形式も「書庫」として残すことにしたいと思います。
ブログで本の感想を書く → 時間がある時にまとめて書庫へ という感じで。



また運営していく中で色々やり方変えるかもしれませんが、どうぞよろしくお願い致します。