2008年2月20日水曜日

『資本開国論』

��野口悠紀雄 著)

主眼は、タイトルの通り、資本自由化によって外国からの資本を受け入れ、日本企業の資本効率を高めるべきだ、ということ。また、コモディティ化する(すなわち付加価値がなくなっていく)製造業を脱し、付加価値の高いサービス業に移行すべきである、と。
現在起きている日本経済の聚落の背景を解説しつつ、その解決策として上記の資本開国とサービス業への移行を提唱している。

例えば、90年代のデフレは、輸入物価の下落や技術革新という貨幣システムとは異なる要因によるものであったのに、政府は有害無益な金融緩和策を続けた。また製造業を政策的に支援することで、旧来型の産業構造を温存した。
これらは、まさしくその通りだな、と思う。

また、資本効率が低い日本企業を復活させるには、外資の受け入れが有効である、というのも、ある程度アグリー。なにしろ、日本企業、資本効率という概念に関心なさ過ぎ・・・。最近、お題目のように唱える企業は増えたが、本当に考えている企業はほんの一握りだろう。これは、私の職業柄非常に重要な論点なのだが、残念ながら、日本の現状は惨憺たるものであると感じている。そうなると、外圧でもない限り、変わりませんわね。しかし、これを実現するために「外資が入ってくる際の様々な障害を取り除く」というような議論はよく聞かれるのであるが、これがまた、私には具体的につかみきれないところだ。「規制を緩和して」とか言うのだが、実際にどの規制をなくせばいいのか、ということがいまいち語られていない気がする(自分で調べろよ、っていう叱責はさておき・・・)

また、サービス業への移行、というのが、私はあまりしっくり理解できない。
私の勉強不足ももちろんあるが、これからの世界はサービス業が引っ張る、というのが感覚的に受け入れられないのだ。確かに、数十年という単位で見れば、現在の米国や欧州各国がそうであるように、ソフトウェア産業や金融サービス業が主役となるのかもしれない。しかし、40年、50年とたっていく中で、本当に国はそれで成り立つのだろうか?今既に、資源の取り合いが始まっている中で、サービス業だけに頼るような産業構造が果たして安定的な経済を築けるのだろうか。(まぁ、そもそも日本は資源がないんだから、資源枯渇や資源戦争の際には製造業やってたって経済は破綻するから同じだ、という見方もあるかもしれないが)
この辺は、もう少し考えてみたいところだな。

ついでに、もう一つ言うと、サービス業への移行!とぶち上げるのはいいが、それは具体的にどうやるんだ?どういうビジネスなんだ??というのもかなり疑問。サービス業のグローバルカンパニー・・・生まれなさそうだよね、日本には。少なくとも今のところその兆しは皆無??

うーん。
というわけで、この本を読んでも、「そうだ、こうすれば日本は良くなる!!」と思えないのでありました。

2 件のコメント:

あき さんのコメント...

単純に考えると、もうかる業種でやりましょうって発想は、貧困な気がします。うまくいえませんが、そんな視点・そんな資本主義でいいのか?と思うんですけど。
でもぺこさんによればどうやら世界標準から行くととても足りてなかったようなんで、外国との競争を不可避にしている以上仕方がないような気もします。
あとサービス業へ移行する、て、田舎で畑を耕しているおじいさんに、丸の内で営業やれって言っているようなイメージがあります。つまり我々への啓蒙が必要なのと、そんな上からの目線ばかりでなくもう少し身の程を知った空気を読んだ方法論がいいような気もします。

ぺこ さんのコメント...

もうかる業種でやりましょう、って、普通に考えれば誰かが提唱したり政府が先導しなくても、自然とそうなるべきことなんですよね〜。日本の問題はむしろ、「儲からない業種」を優遇して、「儲からない体質のままで」温存していること、ではないかと思います。日本の生き残る道がテクノロジーだという前提に立つなら、それもあながち間違いではないのかもしれませんが、イノベーションがどうこういう問題以前に、今の日本企業の資本の使い方が極めて非効率的であることは間違いないと思うので、そこまで保護してしまってはダメではないかと〜。
世界標準から見て日本企業は、業種のいかんによらず、資本効率が悪いです。つまり、100の資本を使って、例えば米国は20の利益を生み出しているのに、日本は5くらいしか生み出せていない。これは数字の面からも明らかですし、何より経営者と話していると明確に感じられます。資本効率を向上させようという「本気」がない。旧来の日本の資本構造上、株価が下がっても経営者は痛くも痒くもないから、ということでしょうね。(株主のことを無視できれば、資本効率は低くても、現状維持で当面経営するのにあまり問題がない)
もちろん、「製造業が中心だから資本効率が先端サービス業に比べて悪い」という面はあるとは思いますが、日本の現状はそこに起因する以上の差があると思います。
��田舎で畑を耕しているおじいさんに、丸の内で営業やれって言っているようなイメージ
まさしく、そうだと思います!!
今議論されている資本効率の高いサービス業というのは、金融業だったりソフトウェア産業だったり。現在の日本の銀行や証券界社に、米国と同じだけの付加価値を生み出せ、というのは難しいでしょう。先端の金融技術を持つ人材がいない。日本と米国の金融機関がやっていることでは、まさしく畑を耕すのと丸の内の営業と同じくらいの開きがあるようです。いや、もっとかもしれない。(正直、金融技術は私には理解不能なレベルです・・・)
そして、それを育成するための手当もされていない。一昔前から、金融業界がこぞって理工系の院卒を採用し始めましたが・・・。金融技術というのは、それを使う顧客がいてこそ発達するものですが、日本ではローカル市場にそのユーザーがいないということも大きいかと思います。(企業の資本政策や投資家の運用手法が極めて保守的)
いったい、この状況をどうしたら打開できるのか。話が「人材の育成」すなわち教育にいきついてしまうため、それこそ国家100年の計ですよね。
で、だからこそ、数十年先に、本当にサービス業が経済を牽引するのか!?ということが気になるんですよね〜。