2013年10月25日金曜日

『マリアビートル』

かなり重たいテーマを、しかも、登場人物が9割型殺人者でバンバン死ぬというブラックな設定を、ここまで軽快に書き上げて多くの人に楽しいと感じながら読ませ、テーマについて考えてもらう、というのはすごいこと。

冷静にみれば、ものすごく辛い話で、私としては「楽しい」とはとても言えないんですが、すごい作品だとは思うので、星5つにしました。
でも、作中の「文章」は、本当に楽しい。

同僚に借りた本。

ここから下、大いにネタばれです。

「どうして人をころしてはいけないのか」と、作中で繰り返される問い。
人の行動は周囲に影響される、という人間の性質。そして大切に思う相手こそが弱みになるということ。それに付け込んで人をコントロールする王子。

じゃ、そういう悪意にはどう対応したらいいのか?
解説に、「本作の真の主題でもある。「悪」に対抗できるのは「正義」ではない。それは「勇気」である。」と書かれている。
うーん、勇気??

だって、最終的に王子に打ち勝つ木村夫妻は、殺人者としての「圧倒的な力と技術」と殺人者として培った「人脈」がものを言っている。
これって、悪に打ち勝つには、「力」だ、ということにはならない?ただ、物理的な力だけではなくてもいいかもしれない。

あと、肝は、木村母か?
作中のほとんどの人間が、少なからず王子に翻弄されているのにて、木村母はどーんとしている。
伝説的な業者である木村父ですら、息子の死に言及されて動揺しかけるのに、それを支えるのは木村母。「生きてますよ、きっと」というその一言で、木村父は、形勢を立て直せる。これこそが、人が人を思う気持ちを弱みとして付け込んできた王子の決定的な敗北。この木村母の強さは、一言でいうとなんだろう?自信?信頼? あるいは、これをもって勇気??

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